厚生労働省は、医療現場における患者・家族からの暴言・暴力(近年は「ペイシェントハラスメント(ペイハラ)」とも呼ばれます)への対策として、全12回の動画教材を無料で公開しています。
医療機関の経営者様・労務ご担当者様から「患者やご家族からの暴言・暴力にどう対応すればよいか、現場任せになっている」というご相談を多くいただく中、この教材はその備えとして活用できる一次情報です。
近年は、救急外来や診療科の現場で刃物を使った傷害事件が報道されるなど、ペイハラは「稀な出来事」ではなく、どの医療機関にも起こり得るリスクとして捉える必要があります。
あまり知られていない教材ですが、医療従事者向けに作られたシリーズで、基礎知識から実務対応まで体系的に学べる内容になっています。
動画の全体構成(全12回)
内容は大きく3つのパートに分かれています。
- 基礎知識(第1〜2回)
- 迷惑行為の現状、国際的な取り組み、患者相談体制など、対策の前提となる知識を扱います。
- 総論(第3〜7回)
- 日頃の備え・発生時の対応・発生後の対応・応招義務・安全配慮義務など、組織としての対応の仕組みづくりを解説します。
- 各論(第8〜12回)
- 暴行・傷害、脅迫・強要、業務妨害・不退去、器物損壊・名誉毀損、わいせつ・ストーカーなど、刑法上の犯罪類型ごとの具体的な対応と法的責任を扱います。
社労士の視点から特に注目したい2つのポイント
安全配慮義務(労働契約法第5条)
医療機関は職員が安全に働けるよう配慮する義務を負っています。
過去には、宿直勤務中の職員が被害に遭った事案で、防犯設備や人員体制の不備が安全配慮義務違反と判断された最高裁判例(川義事件、昭和59年4月10日判決)もあります。
患者対応のトラブルは「接遇の問題」で終わらせず、職場の労務管理・安全衛生の課題として位置づける必要があります。
応招義務(医師法第19条)との関係
医師法上の応招義務は、患者個人に対する私法上の義務ではなく、国に対する公法上の義務と整理されています。
迷惑行為によって診療の基礎となる信頼関係が失われた場合には、診療をお断りすることが正当化され得ることが、厚労省の通知に基づいて示されています。
「応招義務があるから、どんな迷惑行為にも耐えて診療を続けなければならない」という誤解を、組織として解いておくことが重要です。
まずは知ることから
対策の第一歩は、こうした一次情報の存在を知ることだと考えます。
ペイハラ対策の院内研修教材として、あるいは管理職向けの学習コンテンツとして、ぜひ一度ご覧になってみてください。
厚生労働省|医療従事者の勤務環境の改善(患者等による迷惑行為対策)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/quality/index.html#14harat
規程の整備、応招義務や安全配慮義務を踏まえた社内ルールづくりなど、具体的な体制構築でお手伝いできることがあれば、お気軽にご相談ください。


