「相談窓口なら、もう就業規則に載せています」。
そうおっしゃる病院は少なくありません。
しかし、実態を示すデータがあります。
UAゼンセン・ヘルスケア労協の調査(2023年、有効回答7,164件)では、迷惑行為への相談先として「勤務先の相談窓口」を選んだ人は、わずか2.3%でした。
多くの方が実際に頼っているのは「同僚や先輩」(78.5%)や「上司や管理職」(58.9%)です。
さらに、相談窓口が「あるかどうかわからない」と回答した人は57.7%にのぼります。
窓口を作ることと、それが実際に機能することは、まったく別の話です。
今回は、形骸化させない相談窓口の作り方を整理します。
相談窓口の設置方法-3つのパターン
厚生労働省の解説では、相談窓口の設置方法として、次の3つが挙げられています。
- 相談に対応する担当者を、あらかじめ定めること
- 相談に対応するための制度を設けること
- 外部の機関に相談への対応を委託すること
どれか一つを選ぶというより、複数を組み合わせることが基本になります。
ただし、外部の機関への委託については、カスハラ特有の注意点があります。後ほど詳しく触れます。
「形骸化」を防ぐための3つの要件
窓口を設置しただけで終わらせないために、次の3点が重要とされています。
- 相談窓口の担当者が相談を受けた際、関係部門(人事・管理者等)と連携できる仕組みになっていること
- あらかじめ作成した対応マニュアルに基づいて対応すること
- 担当者自身が、相談対応についての研修を受けていること
誰を窓口担当にするか-看護部長・事務長のヒアリング手順
厚生労働省の見解では、相談窓口の担当者を必ずしも人事担当者にする必要はなく、むしろ人事担当者への相談をためらう人がいることを想定して、あえて別の担当者を置くことも考えられるとされています。
ここで一つ、カスハラ特有の視点があります。
パワハラやセクハラは、加害者・被害者とも院内の人間関係の中で完結する問題ですが、カスハラの相手は患者様・ご家族という「外部」です。
相談を受けるだけでなく、警告を発する、診療をお断りする、バックアップに入るといった、外部への対応そのものに繋げられる立場の担当者でなければ、窓口としての機能は半分しか果たせません。
病院の場合、事務長は組織としての判断・対応の権限を持っています。
あわせて、現場に近い立場の管理職(看護部長、リハビリ部門長等)も窓口として組み合わせておくと、より機能しやすくなります。
特に看護師は、患者様・ご家族と接する機会が多く、深刻な迷惑行為を受けやすい代表的な職種ですが、リハビリ職をはじめとするコメディカル全般も、同様に外部と接する立場にあることを忘れてはいけません。
ヒアリングの際に意識したいポイントは、次の通りです。
- 最初から事実確認に入らず、まず「話してくれてありがとう」という受け止めから始める
- 相談者を疑うような質問(「あなたにも原因があったのでは」等)は避ける
- 聞き取った内容は、日時・場所・具体的な言動を、可能な限りそのまま記録する
- その場で対応方針を即答せず、必要に応じて持ち帰り、組織として検討する旨を伝える
外部窓口の活用は慎重に
パワハラ・セクハラ対策では、匿名性を確保できる外部窓口の活用がよく推奨されます。
しかし、カスハラについては、少し慎重に考える必要があります。
外部窓口は、相談を「聞く」ことはできても、警告文の発出や診療のお断り、現場へのバックアップといった、その後の実際の対応までは担えません。
話を聞いてもらえただけで、その先の状況が何も変わらなければ、かえって「相談しても意味がなかった」という不信感につながりかねません。
外部窓口を導入する場合は、聞き取った内容が院内の対応担当(看護部長・事務長等)に確実に引き継がれ、実際の対応につながる仕組みとセットで設計することが重要です。
窓口を増やすこと自体が目的にならないよう、注意してください。
まとめ
「窓口はあるが、機能していない」という状態は、多くの職場で起きています。
担当者の選び方、そして相談がその後の実際の対応にきちんとつながる仕組みまで含めて、初めて「使われる窓口」になります。


